蝉時雨を追いかけて

 振り向くと、部室の方から一年生が二人歩いてきた。

ひとりは暗そうな男だ。でかい黒縁メガネが落ちてくるのか、クイクイ眼鏡の柄を上げている。

背が低くて、ひょろひょろだ。イメージとしては、暗いかまきりのような感じ。

もう一人は、いかにもチャラ男だ。ワックスで立てた茶色い髪をクルクルいじりながら、ガムを噛んでいる。

こちらは背が高くて、体型もがっちりだ。チャラいクマのようなイメージ。


「1年の田端(タバタ)と荻窪(オギクボ)だっ!」


 暗そうなカマキリが一歩前に踏み出した。こちらが田端らしい。


「ちょっと監督ー、俺っちたちがダブルスって、マジで言ってんすかぁ? 俺っち、シングルスがいいんすけどー」


 暗そうに見えたのだが、なぜかしゃべり方はチャラ男だ。


「俺っち、絶対ダブルスなんか向いてないっすよー。なあ、荻窪もそう思ってんだろ?」


「…………………………うん」


 チャラいクマの荻窪は、凄まじく声が小さい。へたすると、ガムを噛む音のほうがうるさいくらい。

このふたり、完全に見た目としゃべりが逆だ。ややこしくてしょうがない。