蝉時雨を追いかけて

「はあ? なんでおれと?」


「僕たちは双子なのだから、拓海以上に相性のいい人なんて考えられないよ。だけど、拓海が今の実力のままだったら、組む事が出来ない」


「そうかもしれないが。それで、おれに練習でもしろと?」


「そう。そうすればシングルスでもダブルスでもうちの高校が優勝出来る」


 拓馬が目を輝かせていた。だけどおれは、まったく乗り気じゃなかった。

もしもおれに実力がついてダブルスで優勝できたとしても、それは全部拓馬の手柄になってしまうのではないだろうか。

拓馬は結局、自分が勝ちたいのだ。

そのためには副部長では不足で、いちおう双子のおれに役目がまわってきたってわけだ。


「結局自分か」


「拓海?」


「悪いけど、拓馬とは組めない」