蝉時雨を追いかけて

「このままじゃ拓海は、三年間一度も大会に出場出来ないまま終わってしまうよ。今まで頑張ってきた意味がなくなってしまうじゃないか」


「いいんだよ。おれはそれなりに満足してる」


 うそをついた。満足はしてない。本当は試合に出たい。勝てるものなら、拓馬にだって勝ちたい。

だけど、無理なんだ。しかたないじゃないか。おれは、才能の壁にぶち当たったんだから。


「拓海が満足していても、僕は満足していないよ。僕は拓海とダブルスで組みたいのさ」


 意外な申し出だった。拓馬は普段、部でナンバー2の実力を持つ副部長とダブルスを組んでいる。

だけど、いくらナンバー2でも拓馬とは実力差があって、ダブルスでは最高でもベスト8までしか進んだことがない。