蝉時雨を追いかけて

「2対1で戦うようなやつにほれるわけないだろ」


 ――2対1とは言ってないわ。2対2、ダブルスよ。ダブルスなら、勝算はあるわ。


「なんだよ、その無駄な自信は。むりだよ、おれたちの実力じゃ」


 ――やってみなきゃわかんないじゃないのォ。オレと組もうぜ!


「断る。おれは勝てないゲームはしない主義なんだ」


 ――だから、勝算は……


 おかっぱはまだなにか言おうとしていたみたいだったが、電話を切った。

ダブルスにしたところで、勝てるわけがないのはわかっている。

おれの実力は拓馬の足元にも及ばないし、おかっぱはおれ以上にへたくそなのだ。


 だけど、あのふたりが付き合い始めたという情報は気になった。

おれの麗華(?)を奪うなんて許せない。確かめる必要がある。

おれは携帯をベッドの上に投げ捨てて部屋を飛び出し、拓馬の部屋の扉を叩いた。