蝉時雨を追いかけて

 ――学校の裏サイトよ。そこに書き込まれてたわ。


「なんだ、ネットかよ。デマなんじゃないのか?」


 ――仮にデマだったとしても、付き合うまで秒読み段階なことに変わりはないわ。


「まあそうだけど。それで? おれにショックを与えたかっただけか?」


 ――そんなわけないわよ。オイ拓海、このまま部長に負けっぱなしじゃ悔しくない?


「くやしくないね。そんな感情はとっくに捨てたからな」


 ――なにもかも負けて、あっというまにマネージャーまでとられて、なんにも感じないの? 見返してやろうとか思わないの?


「思わない」


 ――アラそう。だがオレは思うわ。オレはなんとしても部長に勝ちたいし、あんたを勝たせたいのよ。


「なんだよ、勝たせたいって。気持ち悪いな、顔が」


 ――今は顔見えないじゃないのさ。せめて声がキモいと言いなさいよ。


「声ならいいのかよ。それでなんだ? ふたりがかりで拓馬に挑もうとでも言う気か?」


 ――そういうことよ。なかなか察しがイイじゃない。部長に勝てば、マネージャーもあんたの方がイイって言い出すかもしれないわよ。