蝉時雨を追いかけて


♪♪♪

 携帯電話が鳴った。開いて画面を見ると、「ブサイク」と表示されていた。おかっぱからだ。

めんどくさいが、いちおう電話に出る。おかっぱのブサイクな声が聞こえてきた。


 ――あ、拓海。今大丈夫? もちろん大丈夫よねェ?


「まあ、いちおう」


 ――たったいま、大ニュースを仕入れたわよ。まァ、あんたは知ってるだろうけど。


「学校の近くにエロ本でも落ちてたのか?」


 ――エロ本は落ちてたけど、ニュースは別のことよ。


「落ちてたのかよ」


 ――部長とマネージャーがいよいよ付き合い始めたらしいわ。


「拓馬と北村麗華が?」


 ――そうよ。知らなかったの? あんたら、いちおう双子なのよねェ?


「あくまでもいちおうだからな。それに、拓馬と恋愛の話はしないようにしてるから」


 ――ショック受けるだけだものねェ。


「そういうこと。それで、どこからの情報なんだ?」