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天井の壁紙に、北村麗華が映っていた。
おれは慌てて首を左右に振り、ベッドの上で上半身を起こす。
自己紹介の日から一週間が経っていた。
この一週間、気付くとおれは北村麗華のことを考えている。
北村麗華の顔を思い浮かべるだけで、幸せな気持ちになれた。
だがおれは、まだ北村麗華と一言も会話ができていなかった。
何度か話しかけようとしたことはあった。
ところがそのたびに彼女は拓馬と話をしていて、勇気のないおれにはそこに入り込むことなどできなかったのだ。
目の前にある扉を開ければ、廊下を挟んだ向かい側に拓馬の部屋がある。
あいつも、北村麗華のことを考えているのだろうか。



