蝉時雨を追いかけて

「なんで北村さんのお父さん……まさか、お父さんってゲジ！？」


「はい」


　北村麗華が弱々しくうなずく。そんなバカな。あまりにも違いすぎるじゃないか。

北村麗華はあんなまゆ毛が太くないし、声も大きくないし、手鏡ももって……まあそれくらいは持ってるかもしれないけど。

見た目だって、全然違う。北村麗華は母親の血を色濃く受け継いでいるのだろうか。

だとすれば、良かったねとしか言いようがない。


「良かったね。でも、苗字は違うじゃないか」


「北村は母方の苗字なんです。実は私のお父さんとお母さん、離婚しているので」


「ああ、そうか」


「テニス部に入ったのも、それが理由のひとつなんです」


　そういえば、茨木さんと三人で話をしたとき、テニス部に入った理由を言いかけて邪魔されたんだ。

これがその理由だったのか。