蝉時雨を追いかけて

 

***


 おれの部屋に入ると、北村麗華はベッドの上で正座した。

そういえば、おかっぱもこのベッドに乗ったのだということを思い出して、北村麗華を突き飛ばしそうになった。


「拓海さん、ごめんなさい」


「なにが?」


 おれは突き飛ばそうと持ち上げた腰をまた下ろして、学習イスに座った。

北村麗華は一度土下座をして、また元の体勢に戻ってから髪をかき上げた。


「岡田さんとのダブルス、解散させられちゃったんですよね」


「ああ。なんで知ってるんだ?」


 今日の昼休みに解散させられたばかりで、練習のときに解散が発表されたわけでもない。

それなのに、なぜ彼女が知っているのだろう。


「私、昨日の夜、お父さんにその話を聞いたんです。なんとかとめたかったんですけど、とめられなかった」