蝉時雨を追いかけて

 当然だ。このまま引き下がるわけにはいかない。

拓馬に勝つためにはじめたダブルス。

もうすでにシングルスでは勝ってしまったが、あれは勝ったうちに入らないだろう。

まともに勝負するまで、ダブルスをやめるわけにはいかないんだ。

それに、ダブルスを続けたい、別の理由もある。


「オイ拓海、これで諦めるわけじゃないわよね?」


「ああ、おれはダブルスに関しては、拓馬よりも田端と荻窪に勝ちたいからな」


 そう。あいつらに勝つまで、おれたちはダブルスをやめない。

完膚なきまでに叩きのめす。そう決めたんだ。


「わかってるじゃない。それなら夜の練習、また再開しましょ」


「ああ、そうだな」


 元々おかっぱが茨木さんにベタ惚れで、勝手にこなくなっただけなのだが、せっかく戻ったやる気をそいでもしょうがないので、あえてふれないことにした。