蝉時雨を追いかけて

「特に拓海っ! おまえはっ、拓馬がこなくなった頃からっ、意識が別の方向に向かっているっ! 違うかっ!」


「それは……」


 間違いではない。

あのころから、おれの意識が北村麗華に向いていたことはたしかだ。

なにも言い返すことができない。


「だからっ、おまえたちはっ、解散させるっ! もう決めたことだっ! 文句は受けつけないっ!」


「ちょっと待ってちょうだいよ。それならあの田端と荻窪のコンビはどうなるのよ」


「あいつらは続けさせるっ!」


「そんなのおかしいじゃない」


「問答無用っ!」


 ゲジは手鏡をポケットから取り出してまゆ毛を見つめ始め、それきりなにを話しかけても、うっとりするばかりだった。