アイスクリームパニック

「食べていい?」

ユキはあまりにおいしそうなアイスクリームに、今にもよだれが出そうなほどであった。

「もちろん」

海はニコニコしながら言った。

「いただきます」

ユキは飛びつくようにアイスクリームに手をつけた。少し溶けかかった虹色のアイスクリームは、氷のせいかキラキラ輝いて見えた。

「おいしい」

ユキは夢中でアイスクリームを食べた。何もかも忘れて甘いアイスクリームに酔いしれた。

「海は食べないの?あれ…」

海はいなかった。空のアイスクリームのカップだけがそこにはあった。

「あれ…」

ユキは自分の部屋にいた。ユキはアイスクリームのことばかり考えていて気づかなかったが、海はユキをユキ自身の家に連れてきたのだった。

「海…夏みたいにすぐ去ったのね」

ユキは残りのアイスクリームを食べながらくすっと笑った。


夏だって暑いのは苦手。アイスクリームを食べたいときもある。そんなときに君がアイスクリームを食べたいって思ったら、僕と一緒に食べようよ。僕は風に乗って、海に姿を変えて会いに行くよ。夏の終わりに名残を惜しんでね。