気を取り直して、あたしは席につきながら話す準備に入る。
その間に王子は文庫本にしおりを挟んで聞く体勢を取ってくれた。
「昨日の居残り中、妙に先生の元気がなかったの。それで『元気ないですね』って言ってみたんだ」
「うん」
「そしたらなんか、すっごい拗ねた顔して言うの!『最近の江田ちゃん、俺なしでもちゃんと問題解けるようになったね』って!」
「おぉ」
王子の目が、いつもよりちょっとだけ大きくなった。
“おぉ”と言った口のまま目を見開く王子の顔はかわいい。
ほわ〜んと心が和む。
「とうとうやったよ、浅野君っ!この調子だと居残りしなくてよくなるのも時間の問題じゃない?」
「そうだね、江田さん頑張ってたもんね。やったじゃん」
「うんうんっ!! 浅野君のおかげだよ〜。ホントありがと!!」
勢いあまって、王子の手を取りブンブン振ってしまうあたし。
もうダメだ、あたし。
嬉しすぎて、この嬉しさをどう表現したらいいか分からない。
たった3週間でここまで来れたのも王子がいてくれたからだ!


