「ただいま〜・・・・」
仕方なく家のガレージに車を停めさせ、あたしは玄関を開けた。
すると、いつもより遅い帰宅にお母さんがトコトコやってくる。
「おかえり茜。あら、そちらのイケてる人はどなた?」
「はじめまして。東進ゼミナールの講師をしております、片桐柊と申します。遅くまで残って勉強をさせてしまいましたので、送ってきました」
「あらそぉ〜。茜がいつもお世話になってますぅ〜」
「いえいえ。とんでもないです」
「・・・・」
なんなの、この摩訶不思議なシチュエーション・・・・。
お母さん、あからさまに嬉しそうにしちゃってさ。ちょっとは控えようよ、いい歳なんだから。
先生も先生だよ。
俺様のくせにちゃんとした日本語を使えるところが、なんとなくイラッとくるんですけど。
「ささ、上がってください。狭い家ですみませんねぇ。今お茶用意しますね」
「では、おじゃまします」
ルンルン気分で来客用のスリッパを出すお母さん。
・・・・よかったね、まだお化粧落としていなくて。うん、ホント。


