36.8℃の微熱。

 
「ただいま〜・・・・」


仕方なく家のガレージに車を停めさせ、あたしは玄関を開けた。

すると、いつもより遅い帰宅にお母さんがトコトコやってくる。


「おかえり茜。あら、そちらのイケてる人はどなた?」

「はじめまして。東進ゼミナールの講師をしております、片桐柊と申します。遅くまで残って勉強をさせてしまいましたので、送ってきました」

「あらそぉ〜。茜がいつもお世話になってますぅ〜」

「いえいえ。とんでもないです」

「・・・・」


なんなの、この摩訶不思議なシチュエーション・・・・。

お母さん、あからさまに嬉しそうにしちゃってさ。ちょっとは控えようよ、いい歳なんだから。

先生も先生だよ。

俺様のくせにちゃんとした日本語を使えるところが、なんとなくイラッとくるんですけど。


「ささ、上がってください。狭い家ですみませんねぇ。今お茶用意しますね」

「では、おじゃまします」


ルンルン気分で来客用のスリッパを出すお母さん。

・・・・よかったね、まだお化粧落としていなくて。うん、ホント。