ハッとして横を見ると、先生は真っすぐ前を見たままニヒッと口角を上げて笑った。
これは・・・・う〜ん、何の顔だ?
励ましてくれているのか、またバカにしようとしているのか、どっちにも見える微妙な感じ。
「そんな顔してません!あたしは元から元気ハツラツなんです!」
「ふ〜ん。そうやって強がる江田ちゃんもらしいけどね」
「ホントに泣きそうになんてなってませんってば!」
「はいはい」
何なんだこの人、1人で楽しそうな顔しちゃってさ。
なんか腹立つ。
最近のあたしは、先生のせいで疑い深くなってきている。
騙されてたまるもんかと裏を読む癖ができつつあって、今の場合は「ありがとうございます」って言ったら何か交換条件を突きつけられそうな気がしたんだ。
「おごったし家まで乗せてやってるんだから、塾に入りたそうな人を見つけてこい」みたいな。
だから、泣きそうになってはいたけど逆のことを言った。
けれど先生は、楽しそうな顔を崩さないままで。
今のところ、危険視している交換条件は出しそうにない。


