そう言って、あたしはしばし呆ける先生の手を取り立ち上がった。
泣き真似だったことに驚いているのか、それともあたしの変わり身の早さに驚いているのか・・・・。
きっとどちらもなんだろうけど、でも今は、これ以上長く説明している暇はないのだ!!
空腹を回避するため、サバイバルから脱出するため、あたしは先生の手を引いて走り出した。
「階段を使いましょう!!」
もう気分は隊長。
物言わぬ先生を引き連れ、1階まで全速力で駆け降りる。
ロビーは・・・・よしっ!! 無人だ。
そうして、あとは塾を出るだけだというところで、キーン、コーンとのん気にチャイムが鳴った。
「急ぎましょう!! 早く塾から離れないと見つかっちゃう!!」
グイッ、と先生の手を引く。
けれど・・・・あれっ? さっきまであたしの言いなりだった先生が今度はついてこないぞ。
「ちょっと!!」とさらにグイグイ引っぱるも先生は微動だにせず、痺れを切らして振り返ると。
「江田ちゃんてホントかわいい」
先生はなぜかププッと笑った。


