36.8℃の微熱。

 
そう言って、あたしはしばし呆ける先生の手を取り立ち上がった。

泣き真似だったことに驚いているのか、それともあたしの変わり身の早さに驚いているのか・・・・。

きっとどちらもなんだろうけど、でも今は、これ以上長く説明している暇はないのだ!!

空腹を回避するため、サバイバルから脱出するため、あたしは先生の手を引いて走り出した。


「階段を使いましょう!!」


もう気分は隊長。

物言わぬ先生を引き連れ、1階まで全速力で駆け降りる。

ロビーは・・・・よしっ!! 無人だ。

そうして、あとは塾を出るだけだというところで、キーン、コーンとのん気にチャイムが鳴った。


「急ぎましょう!! 早く塾から離れないと見つかっちゃう!!」


グイッ、と先生の手を引く。

けれど・・・・あれっ? さっきまであたしの言いなりだった先生が今度はついてこないぞ。

「ちょっと!!」とさらにグイグイ引っぱるも先生は微動だにせず、痺れを切らして振り返ると。


「江田ちゃんてホントかわいい」


先生はなぜかププッと笑った。