36.8℃の微熱。

 
「あたしは江───・・」

「かわいいお嬢ちゃんかどうかは別にして、こいつは江田茜。高1で、塾のドベ子ちゃん」


だーっ!!

せっかく言おうと思ったのに!

何気に緊張してたのに!


先生はあたしの久しぶりの台詞を得意げに奪い“ドベ子ちゃん”とまで言い放った。

おまけに強い力で肩をバシバシ叩いてきて、まだ煮玉子が入った口を大きく開けて笑っている。

・・・・そんなに叩かれるとあたし、肩が外れちゃいますけど。


「ひゃっひゃっひゃ!ドベ子ちゃんね。よく見たら、なんかそんな顔してる。柊の好みだろ?」

「まぁな」

「ドS心がくすぐられるってか? 高校の頃からちっとも変わんねぇなぁ、柊は」


細田さんも細田さんで、店内にお客さんがあたしたちだけなのをいいことに、お腹にたっぷりついた肉を揺らしながら笑う。

先生のドSぶりは高校のときから変わらないんだ・・・・。

なんだ、筋金入りじゃん。

治る見込みゼロじゃん!!


仲良く話す2人に、あたしはやっぱりこれは新手のイヤガラセだと思うのだった。