「あたしは江───・・」
「かわいいお嬢ちゃんかどうかは別にして、こいつは江田茜。高1で、塾のドベ子ちゃん」
だーっ!!
せっかく言おうと思ったのに!
何気に緊張してたのに!
先生はあたしの久しぶりの台詞を得意げに奪い“ドベ子ちゃん”とまで言い放った。
おまけに強い力で肩をバシバシ叩いてきて、まだ煮玉子が入った口を大きく開けて笑っている。
・・・・そんなに叩かれるとあたし、肩が外れちゃいますけど。
「ひゃっひゃっひゃ!ドベ子ちゃんね。よく見たら、なんかそんな顔してる。柊の好みだろ?」
「まぁな」
「ドS心がくすぐられるってか? 高校の頃からちっとも変わんねぇなぁ、柊は」
細田さんも細田さんで、店内にお客さんがあたしたちだけなのをいいことに、お腹にたっぷりついた肉を揺らしながら笑う。
先生のドSぶりは高校のときから変わらないんだ・・・・。
なんだ、筋金入りじゃん。
治る見込みゼロじゃん!!
仲良く話す2人に、あたしはやっぱりこれは新手のイヤガラセだと思うのだった。


