36.8℃の微熱。

 
「女々しいヤツだって思ってたけど、今のでちょっと見直したわ。なかなか男だねぇ、浅野君」


徐々に小さくなっていく王子の背中にユカ様がポツリ、感心したようにつぶやいた。・・・・うん。

あたしも今、そう思ったトコ。

黙って頷くと、ユカ様はすかさず「惚れた?」なんて聞いてくる。

もぅ、これだからユカ様は・・・・。


「まさか。浅野君はあたしにとってやっぱり友だち。それ以上でもそれ以下でもないよ。でもさ」

「ん?」

「今の言葉にグッときた。来年は浅野君も好きな子と一緒にクリスマスが過ごせるといいな。あんなに優しいんだもん、浅野君を好きになる子、きっといるよね?」

「そうだね。きっといるね」

「うん」


そんな会話をしながら、あたしたちは王子の姿が廊下の角に消えるまで見送った。

あたしなんかが言えた立場じゃないけど、王子には幸せな恋をしてもらいたいなって思う。

本当にありがとう、王子。


「・・・・じゃあ、行こっか」

「うん」


そうして、あたしたちもまだ賑わいが続く教室を後にした。