どうして・・・・。
その理由は、あたしも何度か考えたことがある。
「たぶん、諦めないからです」
「諦めない?」
「だって、こんなに手のかかる生徒なんて嫌でしょう? 居残りしても分からないし、問題作ってくれても1人じゃ解けないし」
「確かにね。江田ちゃんの入試の日は気になって仕方なかった」
先生はちょっとだけ意地悪な顔をして笑った。
ほわんとタバコの匂いが漂う。
「先生のいいところは、誰も見放さないところだと思います。分かるまでマンツーマンで教えてくれて、教えることを諦めない」
塾の先生じゃないときは俺様な魔王だけど、ドベを見放さないところだけは尊敬している。
そこがあの先生と片桐先生との大きな違いで、厳しくても頑張ろうって思えるところなんだ。
「今日の江田ちゃん、いつもの江田ちゃんじゃないみたいだね。もしかして熱でもあんの?」
「いやいや。フツーです」
「そ?」
「そうそう!いつもの江田ちゃんですよ〜!」
嬉しそうに笑う先生。
あたし、初めて見るかも。


