36.8℃の微熱。

 
どうして・・・・。

その理由は、あたしも何度か考えたことがある。


「たぶん、諦めないからです」

「諦めない?」

「だって、こんなに手のかかる生徒なんて嫌でしょう? 居残りしても分からないし、問題作ってくれても1人じゃ解けないし」

「確かにね。江田ちゃんの入試の日は気になって仕方なかった」


先生はちょっとだけ意地悪な顔をして笑った。

ほわんとタバコの匂いが漂う。


「先生のいいところは、誰も見放さないところだと思います。分かるまでマンツーマンで教えてくれて、教えることを諦めない」


塾の先生じゃないときは俺様な魔王だけど、ドベを見放さないところだけは尊敬している。

そこがあの先生と片桐先生との大きな違いで、厳しくても頑張ろうって思えるところなんだ。


「今日の江田ちゃん、いつもの江田ちゃんじゃないみたいだね。もしかして熱でもあんの?」

「いやいや。フツーです」

「そ?」

「そうそう!いつもの江田ちゃんですよ〜!」


嬉しそうに笑う先生。

あたし、初めて見るかも。