厳しい先生のこと。
もしかしなくても、悪気とか悪意とか、そういうつもりで言ったんじゃなかったんだろうけど。
前から先生の言い方にはトゲがあるなと思っていたから、余計に心にグッサリ刺さった。
厳しくするのが先生の教え方なんだということも分かる。
授業を進めたいのも分かる。
あたしにばっかり時間をかけていられないのもよく分かる。
けれど・・・・。
もう少し、もう少しだけでいいから、言い方一つで傷つく生徒もいることを認識してほしかった。
「───そういうわけで、あたしは数学を嫌いになったんです」
「そういうことだったの・・・・」
コクリ。
あたしは頷いた。
やばい、思い出しながらしゃべっていたら涙が出てきそう・・・・。
「でもさ」
と、タバコを吸い終わったらしい先生は、あたしに近づきながら言葉を続ける。
出かかった涙をキュッと目の奥に押し込み、先生を見上げた。
「俺もけっこう厳しいけど、江田ちゃんはブーブー言いながらもやるじゃん。どうして?」


