「じゃあ、この問題を・・・・そうだな、江田。前に出て解いてみろ」

「はい」


中1のとき、ちょっとずつ問題が難しくなりはじめた頃のこと。

厳しくて有名な先生に指名されたあたしは、言われるままに黒板の前に出てチョークを持った。

教科書の応用問題。

それが黒板には書かれていた。


問題はもう忘れちゃったけど、不思議と先生に言われたことだけは今も鮮明に頭に残っていて。

幼いながらにショックだった。


「早くしろ。こんな問題も解けないのか? もういい。代わりに橋本、解いてみろ。江田に考えさせる時間がもったいない」


基本問題なら大丈夫だけど、応用となるとちょっとばかり時間が必要だったあたし。

黒板の前で必死に考えていたら、そんなことを言われてしまった。

しかも、みんなに聞こえるような大きな声で、バカにするように。


“早くしろ”とか“もういい”とか“もったいない”とか。

それはもう、あたしにとったらかなりショックな言葉で・・・・。

何より、先生に見放されたことが一番心が痛かったんだ。