爽やかイケメン君は、読んでいた文庫本を静かに閉じて、少しだけあたしに体を向ける。

ごめん。名前分からないから、今は“爽やかイケメン君”って呼ばせておくれ・・・・。


「中3のときに通ってた塾の先生が見つけてくれたみたいで。電車の中で落としたらしいんだけど、あたし気づかなくてね。持っててくれたみたい」

「いい先生だね」


いやいやいや。

心の中で思いっきり首を振る。


「う、うん。それなりに」


けれど、これ以上アホなところを見せたくないからか、あたしの口からはそんな台詞が出た。

初日から遅刻寸前だわ、鞄の中身を机に出すわ、明らかに出遅れているんだもん。

今日から挽回しなくちゃ。


すると、爽やかイケメン君は眉毛をピクンとさせて、あたしの顔を指差しながら言う。


「江田さんって、嘘がつけないタイプでしょ? 顔に出てるよ」

「えっ!? マジでか!?」


ガバッ!とおでこを隠すあたし。

名前もう覚えられてた・・・・。

つい変な言葉遣いが出た・・・・。

挽回作戦、撃沈。