36.8℃の微熱。

 
それからすぐに、駅前ロータリーの端、送迎用の車を停めるスペースに黒丸を移動させた先生。

エンジンを切ると。


「で、あんこの人相は? 写メくらい撮ってるでしょ、送って」


と、さっそく指示を出してきた。

あたしは慌てて携帯を開き、写真フォルダからあんこの顔ができるだけ大きく写っているのを探す。


先生には、犬を飼い始めたことも犬種がパグだということも、名前が“あんこ”だということも、何も言っていなかった。

「犬に俺の悪口言ってんじゃないだろうな?」とか言われそうで、ずっと内緒にしていたんだ。

だからさっき、電話であんこの名前を叫んだとき、すごくびっくりされたってワケなんだけど。


それは王子にも言えることで、公園での驚きぶりが物語っている。

・・・・まぁ、王子に話さなかった理由は先生とは別モノで。

なんとなく、あたしに会う口実にあんこを使われたら嫌だなって、そう思ったからだった。


「先生、この写真はどう?」


何枚か目星をつけた写真のうち、1枚を先生に見せる。

先生が無言で頷く。