36.8℃の微熱。

 
「ただいま〜」

「ちょちょちょ、ちょっと待ちなさいあんこ!アンタ、あんまり暴れると〇ンコって呼ぶわよ!」

「・・・・はっ?」


家に着くと“おかえり”の声もなく、代わりにお母さんのピーな言葉が飛んできた。

何事かと慌てて靴を脱ぎ捨て声のするほうへ駆けつけると・・・・。

江田家の愛犬・黒パグのあんこちゃんが、びしょ濡れのまま、捕まえようと追いかけるお母さんから逃げ惑っていた。


よく見ると、お母さんの手にはバスタオルとドライヤー。

・・・・なるほど。

今日はお風呂の日だったのか。


「お母さん、あんこのお風呂はあたしが入れるって決まりじゃん」

「ああ!茜!いたの!ほら、そっち行ったわよ、早く捕まえて!」

「いやいや、だからね」


あたしの姿を見つけたあんこは、藁にもすがるといった感じで一目散に走ってくる。

それをあたしは簡単に捕まえて、ひょいと胸に抱き抱えた。

・・・・ああ、ジットリだよあんこ。

あたしがお風呂に入れてあげられていたら、こんなジットリな体を抱かなくても済むのに。