36.8℃の微熱。

 
「夕焼けに黄昏てる場合じゃないんだけどなぁ」


ふと足を止めて、住宅街の家と家との真ん中、道路の中央に沈んでいく夕日を眺める。

真っ赤に染まった太陽は、なんだか熟れたトマトみたいだ。


そういえば先生は、グリーンピースのほかに、なぜかトマトも嫌いみたいだった。

あんなにおいしいのに。

サラダには付き物のトマトをいつも残して、マリアンヌさんに怒られていたのを思い出す。


「そうだ、あの封筒」


そういえばついでに思い出した。

海の家を離れる日、あたしを追いかけて渡してくれたあの封筒。

その封筒の中には、一体どんなことが書かれているんだろう。


マリアンヌさんは『何かに頼りたくなったときに』って言っていたけど、今開けちゃダメなのかな。

でもな。

『最後のトリデ、そう思って持っときなさい』とも言っていたし。


「う〜ん、もう少し。今がそのときじゃないと信じて!」


味方だと言ってくれたマリアンヌさんの笑顔と夕日を重ねて、あたしは一人、道路の真ん中でファイティングポーズをとった。