「夕焼けに黄昏てる場合じゃないんだけどなぁ」
ふと足を止めて、住宅街の家と家との真ん中、道路の中央に沈んでいく夕日を眺める。
真っ赤に染まった太陽は、なんだか熟れたトマトみたいだ。
そういえば先生は、グリーンピースのほかに、なぜかトマトも嫌いみたいだった。
あんなにおいしいのに。
サラダには付き物のトマトをいつも残して、マリアンヌさんに怒られていたのを思い出す。
「そうだ、あの封筒」
そういえばついでに思い出した。
海の家を離れる日、あたしを追いかけて渡してくれたあの封筒。
その封筒の中には、一体どんなことが書かれているんだろう。
マリアンヌさんは『何かに頼りたくなったときに』って言っていたけど、今開けちゃダメなのかな。
でもな。
『最後のトリデ、そう思って持っときなさい』とも言っていたし。
「う〜ん、もう少し。今がそのときじゃないと信じて!」
味方だと言ってくれたマリアンヌさんの笑顔と夕日を重ねて、あたしは一人、道路の真ん中でファイティングポーズをとった。


