「なに言っちゃってんですか〜、いつも元気なあたしが泣きそうな顔だなんて。やっぱり先生、今日は錯覚続きですね!」


なんて適当に誤魔化して、あたしはサッと先生と距離を取る。

これ以上近づかれたら、ホントにあたし、自分でもどうなるか・・・・泣かずにいられるか自信がない。


なんてことないの、ただちょっと王子の告白で動揺しているだけ。

イエスかノーか。

その答えを出すのはあたしで、だから言わないし・・・・言えない。


「江田ちゃんがそこまで言い張るなら、俺は別にかまわないけど。でもホントに───・・」

「もーっ!いいじゃないですか!それより先生、昼間はありがとうございました。ナンパ、ちゃんと断ってくれたんですね」


先生が“でも”と納得していない様子で、せっかく取った距離を詰めようとしてくるから。

あたしはそれを遮りながら、自然な感じを装いつつ1歩下がる。

すると先生は、これ以上この話題を続けるのは諦めたみたいで。


「じゃあ、先戻ってるわ・・・・」


そう言って、あたしの横を通り過ぎていった。