「赤くなんてなってないですよ!もう夕方だからなんじゃないですか? 目の錯覚です!」


一瞬、いつものようにギャッ!! と言いそうになるのをこらえ、適当に理由をつける。

この人の顔は、どうしてか近くにあるだけで心臓に悪い。

それは、あたしじゃなくてもみんな同じはずだ。・・・・たぶん。


「あ〜、そういえばそうだねぇ。もう夕方だもんねぇ」

「先生の顔だって赤いですよ」

「あらそう?」

「ええ、そうですとも」

「あらら。俺も江田ちゃんのこと言えなかったかぁ。こりゃ失礼」


本当に適当だったけど、納得してくれたみたいでよかった。

はぁ、とひとつ、心でため息。


「じゃあ、錯覚ついでにもう1つ聞いてもいい?」

「はい?」

「さっきから思ってたんだけど、江田ちゃん、泣きそうな顔だよ。どうかしたの?」


けれど、その安堵のため息もすぐにどこかへ飛ばされていった。

頭の中が真っ白になって、心臓がうるさいくらいバクバク鳴る。

・・・・でも、こればっかりは先生に言えるようなことじゃない。