王子、すごく真剣な目だ。
こんな王子、あたしは知らない。
知らないから、少し怖い。
具体的に何が怖いってわけじゃないけど、そろそろ本当に答えを出すべきなんじゃないかって。
王子の目にそう思わせられることが、怖いのかもしれない。
すると。
捕捉するように王子が言う。
「あ、別に今すぐ返事がほしいってわけじゃないんだ。考えてみたら、ちゃんと“好き”って伝えてなかったから。いい機会だし、言っておこうと思って」
王子はそう言うけど・・・・。
伝わってたよ、ちゃんと。
ちゃんと気づいていたのに、そのままにしていたのはあたしだ。
先生と比べるようなまねをしたりして・・・・ホント最低だ、あたし。
「それじゃあまぁ、そういうことだから。俺、仕事に戻るわ」
そう言うと、王子は休めていた手をまた動かしはじめた。
あたしも何か言わなきゃと口を開いたけど、考えつくものはろくでもないものばかりで。
言葉として口からちゃんと出たものは、何一つなかった。
残ったものは・・・・罪悪感。


