36.8℃の微熱。

 
王子、すごく真剣な目だ。

こんな王子、あたしは知らない。

知らないから、少し怖い。

具体的に何が怖いってわけじゃないけど、そろそろ本当に答えを出すべきなんじゃないかって。

王子の目にそう思わせられることが、怖いのかもしれない。


すると。

捕捉するように王子が言う。


「あ、別に今すぐ返事がほしいってわけじゃないんだ。考えてみたら、ちゃんと“好き”って伝えてなかったから。いい機会だし、言っておこうと思って」


王子はそう言うけど・・・・。

伝わってたよ、ちゃんと。

ちゃんと気づいていたのに、そのままにしていたのはあたしだ。

先生と比べるようなまねをしたりして・・・・ホント最低だ、あたし。


「それじゃあまぁ、そういうことだから。俺、仕事に戻るわ」


そう言うと、王子は休めていた手をまた動かしはじめた。

あたしも何か言わなきゃと口を開いたけど、考えつくものはろくでもないものばかりで。

言葉として口からちゃんと出たものは、何一つなかった。


残ったものは・・・・罪悪感。