そうしてにこやかにお姉サマと別れたあたしは急いで店へ戻った。
心配してくれているだろうユカ様への報告と、王子に一言“ありがとう”と言うために。
先生にもお礼を言わなきゃと思ったんだけど、一通り辺りを探しても近くには姿がなくて。
諦めて店に戻ることにした。
「ただいま戻りましたー」
「あ、茜ちゃん!大丈夫だった? 嫌なこと言われなかった?」
「うん、大丈夫!」
店に入ると、息つく暇もなくユカ様が飛んできてくれて、あたしのことを心配してくれた。
王子は厨房のほうから顔だけをのぞかせて、あたしの「大丈夫!」を聞くとすぐに仕事に戻った。
「あっ・・・・」
「・・・・」
お礼を言うタイミングが・・・・。
話しかけようにも、それを拒んでいるような空気が王子から発せられていて、一歩踏み込めない。
あたしがお昼まで寝てしまったせいで、実は今日は、王子とはまだ一言も話せていない。
それに昨日のこともあるし・・・・。
王子もあたしも、お互いに一言目にかける言葉が出てこないのだ。


