だけど先生は、必死なあたしを嘲笑うかのように“コレ”をズボンのポケットに入れる。

あたしの大事な大事な携帯電話。

高校生になったからと、初めて持たせてくれた真新しい携帯電話。


「自分で新しいの買えばいいじゃないですかっ!学生から奪い取るなんて!鬼!悪魔!」


あたしは、半泣きの状態で食ってかかる。

これがないと人生お先真っ暗・・・・それくらい、あたしにとっては大事なものなの。


「ずいぶんとひどい言い草だな、江田ちゃん。誰のおかげで志望校に合格できたと思ってんの?」

「うっ。それは・・・・」

「間違いなく俺だよね? 数学以前の算数から教えてあげたのはどこの誰かな?」

「・・・・」


悔しいっ!!

全くその通りで返す言葉もない。

先生に一番痛いところを突かれたあたしは、ただ睨み返すだけ。


「だからさ、江田ちゃん。俺の条件を飲んでくれたら返すって言ってるじゃん。悪い条件じゃけしてないと思うよ?」

「・・・・」


先生はあたしの顔を覗き込むようにして不適な笑みをこぼした。