う〜ん、百歩譲ってだよ?

恩返しをする責任は、あたしも感じないことはない。


こんな小さい物を運良く拾ってもらえて、その人が目の前にいて、返そうと思ってドアにおでこをぶつけちゃったんだから。

なけなしのお小遣いで湿布くらいは買ってあげられる。

・・・・とことん横暴な人ですが。


「で、でもっ・・・・!急にそんなの持って帰ったら、お母さんなんて言うか。うまく誤魔化せません」


だって、ねぇ。

理由が理由だし、口が裂けても携帯を落としたなんて言えないよ。

それにあたし、自慢じゃないけど誤魔化したり嘘をつくのはめっぽう弱いんだよね。

すぐに顔に出るタチ。


「そこは江田ちゃんに考えてもらわないと。俺、そこまで首突っ込むのは面倒くさいし。パス」


パスって・・・・!!

先生が言い出したんでしょうが!!

もう、あたし泣きたい。

泣いてもいいですか。

いいよ・・・・ね?





そうして、時間軸は今現在へ。

先生はあたしの顔を覗き込むようにして不敵な笑みをこぼした。