音調からその曲のストーリーを汲み取って、音符一つ一つを
大切に演奏する啓太に相対して
美佳さんはマニュアル通りだから…と言うのが
合わない理由なんだそうだ。



「舞台、久しぶりやよね」



美佳さんの話が出ると機嫌が悪くなってしまうから
あたしはわざと話を『舞台が久しぶりだ』と言う方向に持っていった。



「久しぶりやけどさ…」



自分から話を出してきた癖に、啓太はやっぱり機嫌悪くなっている。



「歌劇かな??ただ全部の種目踊るなら
あたしと啓太がペアになるよなぁ」

「うん。歌劇やったら最悪やけどな」



歌劇だったら、練習は異常なほどに激しさを増す。

啓太は美佳さんと演奏するのが嫌なだけなんだろうけど…



「次の練習で公開されるとしたら…
水曜日に公開かな。」

「やな。」



あたしの胸は踊っていた。

久しぶりの舞台。

思い返せば3年は歌劇はしていないし
発表会ですら1年は公式の舞台には立っていない。



お母さんに報告できる。



啓太が聞いた事が本当なら
見に来てってお母さんに言ってみよう。

どこか幸せな気分で、あたしは残りのエビドリアを頬張った。