朝、目を覚ましたらお母さんは居なかった。リビングのテーブルの上に書き置きと、お母さんが作っていってくれた朝ご飯がラップをして置かれていた。





『劇団の練習に行ってきます。朝ご飯、食べなさい。
家にあるものは何でも勝手に使ってええから。
夕方には戻ります。 千秋』



お母さんの字は綺麗だった。




酒の瓶が、全部綺麗に掃除されていた。


『昨日片付けたんかな』



昨日聞いた泣き声は何だったのかな…酒に酔って泣いてたんだろうと、あたしは勝手に思う事にした。



リビングの壁に飾られている写真の中に、裕子さんの写真もあった。黄色い衣装の裾を蹴り上げて踊る裕子さんは、本当にプロだった事を見せていた。他にも知らない人の写真もあったけれど、どれもこれも全て一流のバイラオーラだと物語っている写真ばかり。あたしも、写真を見ているだけで楽しくなった。




でも、その中にお母さんの写真は一枚もなかった。



夕方になって、お母さんは笑顔で帰ってきた。



「今日はキツかったわぁ」