ただ、お母さんは…あたしたち家族と離れてから毎日、此処でこうやって生きてきたんだと。それだけは理解できた。母子なのに他人だった何時間かは、すぐに消えてなくなった。お母さんはどうだったか分からないけど、あたしは…少なくともあたしは。隣で地面に大の字になって寝転がっている、ある1人の日本人女性が自分を生んでくれた母親だって事を認識できていた。




寂しさは、それでも残っていたけれど。



疑う気持ちも残っていたけれど。





聞きたいのに聞けない、もどかしい気持ちもあったけれど。





この時は、どうでも良かった。17年振りに会った母親との静かな時間を満喫したくて、あたしは黙っていた。







そう、この時は分からなかった。
お母さんの抱えていた心の影も
埋められないあたしたちの溝も
隠された真実も……………