しなやかな腕の祈り

お母さんは、二階にある自分の寝室の向かいの部屋を、あたしにあてがってくれた。
12畳くらいの綺麗な部屋だ。



「好きに使っていいから。お腹すいてへん???どっか、ご飯でも行くかぁ」

「あ、じゃあ荷物片付けます」




あたしが荷物を片付けている間、お母さんは部屋のドアに寄っ掛かって、じっとあたしの背中を見つめている。
視線が背中に刺さっている。



「敬語、使わんでよ。普通に話してほしいな。」



お母さんは、真面目な声でそう言った。ハッキリ言って、今日初めて母親に会ったかのような感覚なのに敬語じゃないなら…一体何語で喋れって言うの。そう思った。




「あ…うん…」


「そのファルダ、懐かしい」



あたしのファルダを指差して、お母さんは言った。



「懐かし…い???」

「知らんだ??このファルダ、あたしがフラメンコ始めた時に初めて買ったファルダやで」


本当に懐かしそうに、ファルダを撫でている我が母は本当にフラメンコを愛してるんだと思った。色褪せた、無地の真っ黒なファルダ。