一時は恨んだ人なのに、あたしはその人を目の前にして…本当に穏やかな気持ちになっていた。
安心した…その表現がピッタリくる。しゃくりあげながら泣くあたしを、お母さんはじっと見つめて笑った。




「上がりな。遠い所から、わざわざ有り難う。
疲れたやろうに。荷物、貸しな」




玄関に置いてあった灰皿に煙草を押し付けて、お母さんは両手にあたしの荷物を抱えて部屋の奥へ入っていった。