しなやかな腕の祈り

思い切ってチャイムを押した。呼び出し音が海鳴りのように遠く鳴って、あたしはぎゅっと目を瞑っていた。






足音がする。人間の足音。







もう、どんな結果でもいいや。会って、一言話して帰ろう…。
そんな当初とは全く違った目的を持って目を瞑っている自分に気付いた。



『駄目だ多嘉穂。ちゃんと話そう、お母さんと。


お母さん、会いに来ました…』




その言葉が思い浮かんだ次の瞬間、ドアが開いた。