しなやかな腕の祈り

母は、昭和61年…三重県の松阪市に生まれた。
あたしからして祖父にあたる人、つまり母の父親は
電気工事の自営業をしている人で、幼い頃は
生活も裕福で何ら困った事のないお嬢様だった。
性格も明るく、優しかった母はいじめられることもしばしばで
祖父や祖母は心配ばかりしていたらしい。
小学校を卒業する直前、大好きだった母の祖父を亡くした。
それが後々の母の生き様へと繋がっていく出来事になる。


中学生の間は剣道部に所属し、部活一本の生活を送った。
だけど、その裏で少しずつ少しずつ…
家庭が崩壊していっていた事に気付かなかった。
母は、いつも、どんな状況においても
亡くなった祖父の存在を忘れた事はなく
猛勉強の末、松阪市の隣の伊勢市の
衛生看護科のある女子高へと進学する。



そう、看護師を目指して。