「麻里、最近綺麗になったな。彼氏でも出来たのか?」
「綺麗なのは生まれつきですぅ〜」
久しぶり見るお兄ちゃんは真っ黒のスーツに身を包み腕には豪華な時計をして前よりも男気を感じた。
そして、緩めたワイシャツの奥から見えるシルバーの鎖。
指輪をネックレスとして付けるのは抵抗あるからって言ってチェーンを長めに作ってあげた。
お兄ちゃんのお腹の辺には、きっとあたしのトパーズの指輪がお兄ちゃんを守っている。
小さいけど大きな兄弟の証は離れていても健在だった。
相変わらず莉奈は篤さんにベッタリでいつもと違う淡いグロスが恋する乙女を輝かせていた。
「颯斗は毎日麻里の事ばかり心配してるぞ。まるで自分の女みてぇにな」
お兄ちゃんが席を立つと厳ついサングラスの奥に潜む可愛いらしい二重瞼をちらつかせながら篤さんが言った。
「篤さん、ヤクザの世界って危険なんですよね…?兄をちゃんと守ってあげて下さいね。お願いします」
「あぁ、当たり前だろ。悪いけどなぁ〜盃を交わした兄弟は血の繋がった兄弟より深くて濃いんだよ」
篤さんの真っ直ぐな瞳はこの人ならお兄ちゃんを任せられると思った。
久しぶりの四人での時間はあっという間に過ぎようとしていた…
はずだった…―。


