”会わない”


あたしには残酷過ぎる言葉だった。


やっと会えて、これからは、離れて暮らしていても、たまには会えるって思ってたのに……。


どうして……??


「何でよ!近くにいるのに会えないなんておかしいよ!」


お兄ちゃんの両肩を掴み何度も揺さ振るけど理由は聞かせてくれなかった。ただ”約束は守る”とだけ無表情のまま答えた。


「お兄ちゃんの馬鹿!」


あたしは最後の夜だったのにこの日だけお兄ちゃんの布団には入らなかった。


エメラルドの指輪を握りしめなかなか温まらない体が余計に涙を倍増させた。





でも、あの日襖の奧でお兄ちゃんも本当は泣いていたんだよね…―。


だって、お兄ちゃん泣いたら必ずお風呂に入るよね…―。


あの時のあたしにはお兄ちゃんが一番苦しんでいなんて気付かなかった…。