「おはよ♪てか麻里、来るの早過ぎだよ。そんなに仕事したかったん?」
「別に…。たまたまだよ」
”莉奈に早く会いたかったから”なんて本当の理由言えるわけないやん。
あたしの後ろに立った莉奈は鏡を見ながら乱れた前髪を仕切に直していた。
やっぱこの子は可愛い過ぎる―…。あたしが男なら絶対惚れてたに違いない。
「さっき来てた奴らの正体は金田組の連中よ。早く言えばヤクザ。ここら辺の店はみんな奴らの縄張りなの」
莉奈がいきなり大きな瞳を向けるので慌てて視線を反らした。
「え?オーナーの店じゃないの?」
「今日も麻里は、おバカ全開だね。こうゆう店のバックにはだいたいヤクザが絡んでるの」
莉奈が呆れたように煙草を吹かす姿はもうすっかり定着してきていた。
だからこの前、無銭飲酒の客が暴れ出した時、奴らが現れた途端、大人しくなったんだ。
さっきいた連中の何人かを何度か店で見かけた事を思い出した。
「今日は月初めでしょ?毎月恒例のミーティング。バイト以外は必ず参加しなきゃいけないのよ。例えその日がシフトに入ってなくてもね。休んだら一週間分の給料カットらしいよ。怖いよね」
「だから莉奈時間ギリキリに来たんだ」
「ま、そうゆう事。だって顔合わせたくないもん。麻里はいつも遅刻ギリキリに来るから奴らと会う事はまず無いと思ってたよ。ごめんね」
必死に両手を合わせて謝る莉奈は金田組を仕切っている組長は若くてイケメンと嬉しそうに付け加えた。


