「待ちなさい!」
お父さんに引き止められくるりと振り返るとお父さんは首を横に振った。
「……何?今もお兄ちゃん外に居るんでしょ?こんな寒いんじゃ風邪拗らせちゃうよ」
「待て、麻里、落ち着くんだ。今日は奴はいない。お父さんもお母さんも確認済みだ。だからここに座りなさい」
お父さんがテーブルを指差す。
「どうして今日はいないの?」
「今日は麻里が答えを出すだろうから来ないでくれと言ったんだ。アイツが居ると知ったら答えはすぐに出るだろ?父さん達はお前の本心を知りたかったんだ」
立ちすくむあたしの頭をお母さんが優しく撫でる。
「麻里ちゃん…幸せになるのよ。離れてても貴女はあたし達の大切な娘なんだからね」
「お母さん…」
何度も抱きしめられたお母さんの胸の中はいつもと変わらない石鹸の匂いが鼻を覆った。


