「麻里から離れろ!じゃなきゃその顔ぶっ潰すぞ」
バット片手に現れたのはお兄ちゃんだった。
「はぁ?お前、確か麻里の兄貴だよな?お前にもヤラせてやるよ!てか一緒にヤルか?近親相姦になるけどよっ」
翔太は大声で笑い、更に腰を振り続けた。
「テメェ、俺の麻里に…絶対許さねぇ、地獄に堕ちろ!」
バキッ―――
「ヒッッッッ―」
「お兄ちゃん止めて!」
狭いトイレの中に響き渡る悲鳴と罵声が夜明けの公園をよりいっそう不気味にさせた。
「麻里、ほら上着きろ」
お兄ちゃんは着ていたシャツをあたしに羽織り尚も翔太の頭や体を殴り続けた。
やがて翔太は血だらけのまま倒れピクピクと痙攣していた。
「麻里、大丈夫か?痛くなかったか?」
「お…にいちゃん、ごめんなさい。汚い妹を許して…あたしお兄ちゃんをあの女に取られて悔しくて…」
「もう何も言うな。分かってたよ。麻里は世界一綺麗だよ、綺麗過ぎるから傷付きやくすて、壊れやすいんだ。麻里の心は硝子で出来ているのかもしれないな」
こんな汚れた身体をお兄ちゃんはずっと抱きしめてくれた。
―――――――
――――
ねぇ、お兄ちゃん
もし…この時あたしがお兄ちゃんの彼女だったらキスしてくれた?
”愛してる”とか言ってくれた?
どうして、あたし達、兄弟なんだろう―…。


