病院に着くとちゃんと歩けているのか分からないくらい足元がフワフワしていて一也さんに支えられながらお兄ちゃんの病室まで連れて行かれた。


病室の前にはお兄ちゃんの組の人がヅラリと並んでいてお兄ちゃんが”親父”と呼んでいる組長さんと目が合い軽く会釈をした。


「麻里、こっち」


病室のドアから首を出して手招きしているのは篤さんだった。


恐る恐る病室に近付く。


胸のネックレスを握る手に力が入り、ここまで来ても冗談だと思いたかった。


「麻里、颯斗は何も悪くないんだ。正当防衛だよ」


篤さんが小声で話してきたが全く耳が受け付けない。


目の前にある薄い黄色のカーテンの奧にいるお兄ちゃんの姿を幾度も想像した。



”たいしたことねぇよ”
って、笑っているのか…


包帯をグルグルに巻かれているのか…



医者や看護師達の慌ただしい動きに体がピクピクと反応して消毒液の臭いと心電図の音が体中の神経を麻痺させた。