莉奈から言われた事が気になる反面、優しい剛の態度にあれは”束縛”ではなく”愛情”なんだと思うようになっていた。


剛は金融会社に就職が決まり前よりスーツ姿が似合うよう思えた。


クリスマスも一緒に過ごし銀世界一色を眺めながら聖なる夜を過ごした。


お兄ちゃんからの連絡は無く、今年も年が明けようとしていた。


「麻里は今年もお父さん達と一緒に行かないのか?」


リビングで新聞を読みながらくつろぐお父さんが話しかける。


「う、うん。バイトあるし飛行機怖いしね」


「残念だな」


今年も両親が仕事で海外に発つ日が近付いていた。


去年はお兄ちゃんと年を越したんだ。


あれから一年も経つなんて時の流れは早過ぎる。


篤さんからの情報でお兄ちゃんのいる宮滝組は県外まで勢力を伸ばし頭(カシラ)として名を挙げていると聞いた。


また一人ぼっちの年越し――…。


両親がこの時期、海外に行く事は剛にはまだ言ってなかった。