その日以来、お兄ちゃんをどうしても避けてしまう。
お兄ちゃんの帰りが遅いとまたあの女と一緒にいるんだ…
あの大きな手で手を繋いでるんだ…
筋肉まみれの腕で抱きしめてるんだ…
優しい言葉を浴びせながらキスしてるんだ…
と、勝手に想像しては、そこら辺の家具に当たり散らした。
だからお兄ちゃんへの腹いせに髪を染め、煙草を覚え、ヤンキーグループの仲間に入った。
そして、ヤンキーグループのリーダーでもある翔太(ショウタ)に告白され好きでもないのに彼女になった。
お兄ちゃんのいる前で、わざとイチャイチャしてやった。
もしかしたらお兄ちゃんも嫉妬してくれるんじゃないかという乏しい作戦は見事に失敗に終わった。
あの頃のあたしは最低最悪の妹、いや、女だった。
そして――
事件は起きた。


