月が赤黒い山々に隠れはじめていた。

もうその姿は、先端の鋭く湾曲した頭しか見えなくなっている。


「ミカエル、時間がないわ」


地面を必死に探すマリアが眉間に深いしわを湛えた顔をこちらに向けた。


時間がない。


それは痛いほどに分かっている。


地道な作業では見つける時間はもはやない。



「マリア、おまえは林のオダケンたちのところに戻れ。あとは自分がやる」


一枚羽を抜き、イメージする。


この地面を根こそぎ宙に舞わせるほどの威力を持ち、風を起こすことができるような武器をこの手にするために。



そう言えば、この間アイツの母殿が『寿司』を作るのに、団扇を使っていたな。


そうだな。
巨大なアレなら出来そうか。


まぁ、今の自分の力なら、それも容易いだろう。



瞬間。


手の中に自分の身の丈と同じ大きさの団扇が出現する。


白地に『祭』と赤文字の入ったそれを両手でしっかり握りしめ、構えをとる。



「さぁ、我が元に来るがいい」