「ちょ……落ち着いた方がええって。なぁ。ミハイル!!」


隣で自分を制するように言う輩がいる。


なにが落ち着けだ?
落ち着いていられる状況であるはずがない。


マリアの魂が闇に堕ちていく。


これを止める術を持たない自分。
そんな状況でなにをどう落ち着けと言うのだ!!


「離せ……自分に触れるな!!」


肩を揺さぶるその男の手を振りほどくと、男は数メートル吹っ飛んだ。


「うおっ!!」


自分のマリアと決定的に違う、抜群の運動神経を持ったその男は、吹っ飛ばされながらも体制を整え、キッと自分を睨みつけた。


「心配なのはオレも同じや!! 焦る気持ちも一緒や!! でも、おまえがそんなんしとったら、いつまでたっても助けられんやろが。このたわけが!!」


そう言って、自分に向かって走ってくると、自分の顔面に思いっきり拳を見舞った。


「っ……!!」


マリアを抱えたまま、避けることもできずに喰らったヨハネの一撃は思ったよりも衝撃が強く、そのまま数歩よろめいてしまった。


「どうや? 目ぇ冷めたか、ミハイル!!」