「口の聞き方、間違ってない? 片翼さん」

「おまえのほうが下だ。下衆悪魔」


ネビロスはケタケタと声をあげて笑う。

どうやら、アイツの戦ったネビロスとは『種類』が違うらしい。
同じ姿をしたコレをアイツが見たら、さぞや落胆するだろう。
この話は……絶対にできないな。


「あー、笑った。傑作。で、ここに何の用? あー。そうか。ご主人様の毒にやられた阿呆がいましたっけ、そちらに? で、命の雫がほしいとかなんとかで。御苦労さまだな―。中途半端な姿に単身乗り込むなんて勇気。バカじゃないの?」


ちゃんとした会話しろ。
バカ悪魔が。


「あはっ。怒ってる? だってバカにバカって言ってもおかしくないでしょー。あはっ。どうしよう? 殺したいんだけど」


あはっ。
殺されたくないんですけど。


「やーな顔。その小馬鹿にした態度が気に入らないなー。おまえなんかさー。マリアがいなくちゃ今はなーんも出来ないただの出来損ないでしょーに。あはっ。でもマリアはいるのか。OBが」

「マリア、我慢しなくてもいいぞ」

「……大人の女はあれくらいの挑発には乗らないものよ、ミカエル」


なるほどな。
アイツなら。
眉を吊り上げて「キー、キー」地団太踏んでいるだろうに。
さすがに年は重ねてないな。


「あはっ。いやー、ちょっと前までは『裏切り者』だったのにー。鞍替えはやー。そんな『尻軽』だから『神』なんかの子を『簡単』に産めるんだねー。あはっ。傑作」

「だそうだぞ、マリア」

ちらりとマリアの顔を覗く。
眉間に恐ろしくしわが寄り、目じりが上がっている。


大人の女もこれには限界だな。


それに、言っていることが気に食わない。


『尻軽』?
誰が?
そんなこと、アイツの前で言ってみろ。

おまえ、即死するくらいの霊力浴びるぞ。