マリアはあえて『誰』とは言わなかった。

だが、あの顔は間違いなくそれを分かっていて言っている。


マリアは二人のことを言っているのだろう。


地上で毒に侵されたまま眠るマリアと。
森で棘に身を締め付けられるジジィと。


心配と聞かれ。
そうでもないとは言い切れない自分がいた。


なんだ?
いつからこんな弱気になった?

らしくない。
らしくない自分にイライラする。


さっさと終わらせてしまおう。
マリアを助けてしまえば、こんな気持ちはどこかへ吹き飛ぶに違いないのだ。


失いたくはない。


マリアも。
あの口のへらないド派手ジジィも。


だが、問題がある。


ここへ来たのはいいのだが。


この広い地獄の中。
どうやってそのただ一人を見つけるのか。


片翼しかない自分では満足に空を飛んで移動することもできない。

まして、マリアを抱きかかえてなど、数センチ浮上するのも危うい。


まったく。

これではバカにされても何一つ言い返せやしない。


「どうするの?」


マリアが聞いてきた。


どうするって聞く前に、おまえも少しは考えろ。

その脳みそはお飾りか?
使わなければ、無理にでも使わせてやる。